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14歳の栞

解けた靴紐、倒れる自転車、机と椅子を引く音、グラウンドで舞う砂埃。

自分に自信が無い子、自分が嫌いな子、みんなと仲良くなりたい子、明るい子、クラスの中心的存在な子、好きな子がいる子、寝てるあの子、クラスに来れない子、絵が上手い子、バスケが好きな子…。

あの時の自分は、その子たちがどのように過ごして、どのようなことを考えていたか、絶対分からないし、興味もなかった。

大人になった今だからこそ分かること、大人になった今だからこそ分からないこと、その全てをひっくるめて、2年6組の子たちが愛おしく、そして眩しく見えた。

━━━━━━━【※以下、ネタバレ含みます。見たくない方は飛ばしてください。】━━━━━━━━



他愛ない2年6組。

特に大きな問題も、事件も、何も起こらない。
ただ、一人一人が等身大で悩み事や色んな思い事がある。

それは重かったり、軽かったり、大人からしてみれば大したことない問題もあるだけど、あの子たちにはそれが今最大のもので、ぶつかっていることでもある。

印象的だったのは「早く大人になりたい」と答える子が多かったこと。そしてその子達に対して「どんな大人になりたいか」ではなく、「どんな大人になりたくないか」を聞いているところだった。

きっと14歳という年齢は難しくて「どんな大人になりたいか」はまだぼんやりとしてるんだと思う。
ただ「どんな大人になりたくないか」は明確にそれぞれの考えがあった。

きっとこの映画は2年6組でなくても、5組でも4組でも作れたものだと思う。
そのくらい、本当に一人一人、色んなことを思って、悩んで、みんななりに答えを出そうとしていた。

個人的に好きなシーンがあって、それがバスケ部の子が女の子からバレンタインを貰うんだけど、そのお返しをきちんとその女の子の家まで行って渡すんだけど、もうなんかもう!!!!めっちゃ!!!!好き!!!!!ってなってしまった。頭抱えるわあんなん甘酸っぱぁ…ってなってしまった、へへへ。

あと先生のシーンが来ると絶対に泣いてしまう。涙腺よわよわ。
先生の授業風景を見ていて「なんで?」と生徒に問うシーンがあるんだけど、ああいう先生素敵だなぁと思った。
「なんでそう思ったのか」「なんでそうしたのか」は大切で、結果ではなくその過程やその過程で思ったことを凄く大切にしてくれる先生なんだろうな、と思う。

14歳って本音を言うのが恥ずかしかったり、インタビューでも勿論言えない本音とかあったと思う。
だからこそ先生の「なんで?」に恥ずかしそうに素直に答えるみんなが愛おしく思えた。


私たちから見るとまだみんなは子供だし、大人ぶってて可愛いなぁなんて思ったりするけど、私たちが思っている以上にみんなは大人で。

そんな等身大の14歳の本音やあどけない顔を見られて凄く楽しかったな、本当に。

きっとこの映画は中高生が見ても「へえ」くらいなのかな。
大人になればなるほど楽しめるのかな、なんて思ったりした。




━━━━━━【※ネタバレ終わり※】━━━━━━━━


クリープハイプの「栞」が主題歌になっているんだけど、まぁピッタリすぎる。

「ありがちで退屈などこにでもある続きが 開いたら落ちてひらひらと風に舞う 迷っても止まってもいつも今を教えてくれた栞」

みんなの日常は恐らくどこの学校にもあるもので、でもそれは今しか手に入らないもので、大人はそのページに栞をしていて、ただ開くことしか出来ない。

だからこそ、今みんなが抱いている悩み事や不安や色んな気持ちを大切に綴じておいてほしい。
そのページはきっと10年後、かけがえのない思い出になっていて、眩しく光るものになるので。

あの時、私の隣で寝ていたあいつ。
誰かのことをいじっていたあいつ。
お笑いが大好きだったあの子。
本が好きだったあの子。
佐藤健が好きだったあの子や、その子が好きだったあいつ。

何を考えているのかなんて、あの時、考えたこともなかった。
誰かに好かれているか、嫌われていないか気にしていた私はあのページに想いを挟んで、また新しいページを開いていく。

青春なんて、うつむいてるくらいがちょうどいい。
今は「つまらない」って思ってていい。
「大人になりたい」って思ってていいし「子供に戻りたい」って思っていい。

いつか大人になって、文庫を手にして栞のページを開いた時。

きっと君たちの「ありがちな日々」はキラキラしたものになっているから。

その気持ちを大事に綴じておいてください。

14歳の栞は、14歳の君たちにしか作れないものだから。

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